「アセット見える化」が可能にする物流ビジネス変革(前編)――Toyokeizai Logistics Conference 2018より

「米Amazonは、小売りのみならず、運輸、輸送、ロジスティクス全体におよぶ巨大な市場を一変させました」。アームのIoTサービスグループでロジスティクス市場担当責任者兼ディレクターを務めるThomas Kurianは、こう前置きしてから、アームが支援する物流ビジネス変革について語りました。

本稿では、2018年10月12日に東京都内で開催された「Toyokeizai Logistics Conference 2018~IoT時代を迎えた物流ビジネスの『再生』と『躍進』~」(主催:東洋経済新報社)から、アームの講演「『アセット見える化』による物流ビジネス変革」を前編と後編の2回に分けて紹介します。(後編はこちらからご覧ください。)

2018年10月12日に東京都中央区の野村コンファレンスプラザ日本橋で開催されたToyokeizai Logistics Conference 2018

「真にリアルタイム」な世界が求められている

Kurianは、Amazonを「小売り、ロジスティクス、テクノロジーという3つの顔を持っている」と表現したうえで、現在の小売業界について「市場の各プレーヤーが生き残りをかけて、運送、受注から配送までの一連のフルフィルメント業務、ラストワンマイル・デリバリーというきめ細かい業務までを手がけるようになり、市場の区切りがあいまいになってきています」と指摘。そのためArmでは「ロジスティクス市場」を、小売りから輸送、運輸、全般的なロジスティクスまでを包含した市場として捉えていることを説明しました。

「ロジスティクス市場のプレーヤーと会話すると、各社が何十億米ドルという巨額な資金をビジネス変革に投入していることが分かります」(Kurian)。一例としては、米国の大手ホームセンターでDIYを中心に展開するThe Home Depot(ザ・ホーム・デポ)が挙げられます。同社は今後3年にわたってオムニチャネルの取り組みに54億米ドルを投資する計画です。

ここからKurianは、サプライチェーンの見える化に焦点を絞りました。「こんにちのサプライチェーンに携わる企業は、『真にリアルタイム』な世界で業務を遂行することが求められています。すなわち、分単位で業務上の意思決定を支えるために、在庫もオペレーションもカスタマージャーニーもカバーする、100%の見える化を必要とする世界です。しかし、現実はそれには遠く、まだそのレベルに到達していません」(Kurian)。

アームのIoTサービスグループでロジスティクス市場担当責任者兼ディレクターを務めるThomas Kurianは、ロジスティクス企業における技術投資とIoTの用途が大きく3つあると示しました。

仏GEODISが実施したサプライチェーンのグローバル調査によれば、サプライチェーンの全体にわたる見える化を達成しているのはわずか6%にとどまっています。「自社」を中心に、供給側に「調達元」と「調達元の調達元」、出荷側に「顧客」「顧客の顧客」がつながるサプライチェーンを考えたとき、見える化の範囲が「自社」にとどまっているのが15%、「自社」から前後含めて1~2つの幅までカバーしているのが圧倒的に多く62%、3~4つの幅まで広がっているのが17%という結果でした。「IoTをはじめとしたテクノロジーに投資し、サプライチェーンの100%見える化を推進する必要があります」(Kurian)。

出典:仏GEODISが実施したサプライチェーンのグローバル調査を元にアームが作成

「スキャン」から「スキャンレス」へ

次にKurianが指摘したのが、サプライチェーン内で物品に対して繰り返し行われる「スキャン」のコストです。

現在アームはロジスティクス市場のコンサルティング会社である米SJ Consulting Groupと共同で調査を実施しており、その結果をまとめたレポートを2019年初旬に発表する予定です。Kurianはこの調査から得られた知見を紹介しました。「この調査では、ロジスティクスの大手企業である米FedEx、独DHL、中国のインターネット通販大手の JD.com(京東集団)、インドのコングロマリットReliance、米国の薬局チェーン最大手CVSなど、業界を代表する企業の幹部を取材しました。そこで得られた最大の気付きの1つがスキャンにまつわることです。サプライチェーンの中で非常に多くのスキャンが行われており、それにかかるコストが大きいことが明らかになりました」(Kurian)。

出典:アームと米SJ Consulting Groupの共同調査

例としてFedExを挙げましょう。同社のように配送の自動化を進めている企業でも、1つの荷物を送り届けるまでに手動と自動で25回もスキャンを行っています。そして、それに約50セントもの費用がかかっています。もっと大きな物品を扱う企業や、自動化の進んでいない企業、あるいは小売業者のように在庫を抱える企業では、スキャンの回数はさらに増え、その費用も増えていきます。 では、バーコードスキャンを使えばいいのでしょうか? 「実はバーコードは、サプライチェーンのリアルタイムの見える化には役立ちません。そこでアームの顧客企業は、スキャンに関わる費用を削減するためにIoTを取り入れ始めています」(Kurian)。

FedExのCEOであるFrederick Smith氏は、「荷物に関する情報は、その荷物と同じくらい重要だ」と指摘しています。この考え方こそ、サプライチェーンとアセットの見える化を遂げるための鍵になるとKurianは述べました。荷物の情報をリアルタイムで得るために、「スキャン」から「スキャンレス」へと転換する必要があるのです。

サプライチェーン上には、パレットやクレーン、移動中の荷物、倉庫内に保管されている物品など、常に移動しているアセットが何百万個と存在しています。これらのアセットを見える化することは、サプライチェーンのリアルタイム見える化を促進するだけではありません。以下のような問いにも答えることが可能です。すなわち:

  • わたしの荷物はどこにある?
  • わたしの荷物はパレット上でどんな状態にある?
  • どうすれば、電子的・デジタル的な手法でリアルタイムに情報を提供できるのか?
  • どうすれば、見える化を進めつつ、スキャンの回数を減らし、コストを削減できるのか?

アームのIoTプラットフォームで見える化ソリューションを構築

最後にKurianは、アームの顧客企業である米Zebra Technologiesの取り組みについて紹介しました。同社はFortune 500に名を連ねる企業の95%を顧客に抱えて製品やサービスを提供しており、サプライチェーンの見える化、オムニチャネル、ラストワンマイルのフルフィルメント業務をアームのIoTプラットフォーム「Arm Pelion IoT Platform」を活用して実現しています。

同社のデータ・プラットフォーム「Savanna」では、Pelion の デバイス管理サービス(Pelion Device Management)を使って、IoTデバイスを安全に接続、管理し、複数のIoTソリューションを提供しています。Kurianはそのうち3つのソリューションを紹介しました。

1. スマートパック:荷物や貨物がトレーラーやコンテナに積載される際の積荷(荷物を積む作業)を最適化します。これにより、荷物が正確にトレーラーや飛行機などの貨物機に積み込まれ、荷物・貨物の移動時間を削減できるほか、飛行機においては安全面で特に重要なロードバランスの確保に役立っています

2. スマートレンズ:小売り向けのソリューションで、モノの位置や動きを自動でセンシングして記録し、店舗のスマート化を実現しています

3. ポジティブペイシェントID/ペイシェントフローアナリティクス:病院内におけるソリューションで、正確な患者のID、患者の治療の流れをその位置と同時に把握し、患者の安全を確保しながら院内におけるスループット改善に役立っています。

米Zebra Technologiesがアームの「Pelion IoT Platform」を活用して提供しているソリューションの例

後編はこちらからご覧ください。

お問い合わせ

Arm Pelion IoT Platformについてさらに詳しくは、アーム株式会社 IoTサービスグループまで、こちらのWebフォーム かメール( iotasia@arm.com )にて、日本語でお問い合わせください。

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