「アセット見える化」が可能にする物流ビジネス変革(後編)――Toyokeizai Logistics Conference 2018より

業界の外からやって来たディスラプター(創造的破壊者)が既存の産業構造をまったく変えてしまう――。さまざまな業界で、そんなことが起こっています。ロジスティクス業界でも、米Amazonはもとより、中国に目を向ければモバイルコマース大手Alibaba(アリババ)が電子決済のAlipay(アリペイ)や、生鮮食品スーパーの盒馬鮮生(Hema Xiansheng)を手がけ、流通から小売りまで大きな改革を起こしています。

「だからこそ今、既存のプレーヤーにとって非常に重要なのは、デジタルテクノロジーを活用した物流の新たな仕組み、ビジネスプロセス、プラットフォームをいかに構築するか。サプライチェーン横断でアセット(物品)の見える化を実現することは不可欠な要素であり、そこでアームは大きく貢献できます」。

アームのIoTサービスグループで日本市場のセールス&事業開発ディレクターを務める春田 篤志はこのように語り、「Arm Pelion IoT Platform」が物流変革をどのように支援できるかについて説明しました。

Toyokeizai Logistics Conference 2018に登壇したアーム株式会社 IoTサービスグループ セールス&事業開発ディレクター春田 篤志

本稿は、2018年10月12日に東京都内で開催された「Toyokeizai Logistics Conference 2018~IoT時代を迎えた物流ビジネスの『再生』と『躍進』~」(主催:東洋経済新報社)から、アームの講演「『アセット見える化』による物流ビジネス変革」を2回に分けて紹介する記事の後編です。(前編はこちらからご覧ください。)

アームが提供するIoTプラットフォームとは

春田は、アームが提供するIoTプラットフォームであるPelionがアセット見える化にどのように役立つのかを解説しました。

Pelionでは3つのサービスを提供しています。いずれも、ロジスティクス向けのIoT活用において、業務アプリケーションなどのITシステムと、フィールドでたとえば物品の位置をトラッキングしたり状態を把握するために使われるIoTデバイスの間にまたがって機能します。

Arm Pelion IoT Platformのサービス構成

3つのサービスについて、それぞれ簡単に紹介しましょう。1つ目はIoTデバイスのセルラー回線への接続を簡単にするConnectivity Management(コネクティビティ管理サービス)、2つ目はIoTデバイスをセキュアかつ簡単に管理するData Management(データ管理サービス)、IoTデバイスから集めたデータをビジネス活動で有効な形で使えるようにするDevice Management(デバイス管理サービス)です。

「さらにアームは、長年にわたって手がけてきた半導体IP事業で培った技術や経験を元に、IoTデバイスを低消費電力かつセキュアに実現するための構成要素を提供しています。そのため、IoTデバイスが内蔵するチップから業務システムに至るまでのエンド・ツー・エンド、換言すればチップ・ツー・クラウドで、IoTデバイスを効率的かつセキュアにつなげることが可能です」(春田)。

Pelion IoT Platformについてさらに詳しくは、こちらをご覧ください(英語)

国・地域をまたぐIoT通信をワンストップで提供

続けて春田は、3つのサービスについて順番に詳しく紹介しました。

1つ目はコネクティビティ管理サービスです。これは、アームがMVNO(仮想移動体通信事業者)としてセルラー回線のサービスを提供するものです。

Pelion Connectivity Managementサービスの概要

たとえば物流では、国や地域をまたいで物品が生産地から消費地まで届けられます。その間とぎれなく物品をトラッキングするには、各国・地域でそれぞれ通信回線を利用しなければなりません。通信事業者から低料金で効率的なデータ通信プランの提供を受けるには個々に交渉・契約する必要がありますが、それは大変な仕事です。Pelionのコネクティビティ管理サービスはこの負荷を軽減します。

具体的には、グローバルで約600のセルラー回線・ネットワークサービスを利用でき、利用者の総コストを下げるように国・地域ごとに適切な回線を提供します。自由度も高く、たとえば朝と夜で違うデータ通信プランを使うことも可能です。

IoTデバイスのセルラー通信では一般に、SIMカードを搭載することで回線を利用できるようにしますが、現在はeSIM、eUICCと呼ばれる、チップ型や、チップ上に搭載されるソフトウェアSIMで実現した通信サービスが提供されるようになってきました。これまで異なるキャリア回線を利用するにはSIMカードを差し替える必要がありましたが、運用者にとってはオーバーヘッド(運用負荷)が大きいという課題がありました。eSIMやeUICCを用いれば、キャリアプロファイルをネットワーク経由で遠隔から変更できるようになり、場所や条件に適した細かな運用を実現でき、より簡便かつ低コストで、効率的に通信サービスを利用できるようになります。

Pelion Connectivity Managementについてさらに詳しくは、こちらをご覧ください(英語)

大量のデバイスをライフサイクルにわたって一元管理

2つ目はデバイス管理サービスです。

IoTでは、1つのアプリケーションを実現するためにごくシンプルなセンサー端末から、トラッキング用端末、高機能のエッジゲートウェイなどさまざまな機器が用いられ、それぞれに複数の機種が混在する場合もあります。フィールドに配備したそれらの多種多様かつ大量のデバイスを、いかに効率的に管理するか。その課題に応えるのがこのサービスです。

Pelion Device Managementサービスの概要

IoTデバイス管理には大きく分けて2つの要素があります。1つは、デバイスからクラウドまでセキュアな通信経路を担保すること。IoTでは、まず「信頼できるデバイス」であることを確認し、その上でネットワークに迎え入れて、その信頼できるデバイスから「信頼できるデータ」を吸い上げる必要があります。そのためには、セキュアな通信経路を担保することが不可欠です。

もう1つは、デバイスがフィールドに配備されて特定のネットワークにつながった後の管理です。そのデバイスが「どの事業者に管理されるのか」「どういったサービスにつながるのか」「誰がそのデバイスのデータにアクセスできるのか」という、いわゆるオンボーディングに必要なコンフィギュレーション作業を自動化します。その後IoTアプリケーションを運用していく中で、「特定のデバイスの特定の機能を変えたい」「アクセスコントロールをしたい」という場合は、コンフィギュレーションをネットワーク経由で変更することが可能です。

あるいは、特定のデバイスに対し、「内蔵センサーの処理アルゴリズムを更新したい」「新しい追加のソフトウェアサービスを追加したい」といった場合、クラウド側からネットワーク経由で当該デバイスのファームウェアを更新することで、そうした更新や追加を実現できます。

ロジスティクス領域のIoTでは、いろんな流通経路やサプライチェーンで物品をトラッキングする際に、対象物ごとに適する通信回線サービスやデバイスが異なります。それらを個々に管理するシステムを用意するのは容易ではなく、煩雑でコスト高になってしまいます。Pelionのデバイス管理サービスを利用すれば、同じ仕組み、同じプロトコル、同じ方法で、デバイスをそのライフサイクルにわたって一元的に管理することが可能です。

Pelion Device Managementについてさらに詳しくは、こちらをご覧ください(英語)

データから知見を生み出す基盤を提供

3つ目はデータ管理サービスです。

IoTアプリケーションでは、多種多様なデバイスからさまざまなデータが集まってきます。それらのデータから価値を取り出せるように支援するのがこのサービスです。

Pelion Data Managementサービスの概要

具体的には、まずデータを収集して記録するクラウドのデータウェアハウス機能があります。さらに、IoTデバイスから収集したデータに、それとは別の企業活動で得たさまざまなデータや、第三者が提供するデータを統合する。そこから、事業に役立つより良い知見を獲得する。そのためにデータをいろんな切り口で分析する。そのためのツール群やダッシュボードを提供します。

ただ、アームはPelionを介してデータ活用の基盤となるこれらの機能を提供しますが、IoTを適用するビジネスそのものや、その業務プロセスを熟知しているのは実際の事業を手がけるユーザー側です。したがって高度な分析は、事業会社が自社あるいは専門的な分析ベンダーと連携することで実行し、それをもとにオペレーション効率化や新しい物流の仕組み、サービスを実現していく形になります。

Pelion Data Managementについてさらに詳しくは、こちらをご覧ください(英語)

IoTプラットフォームの落とし穴

アームはこのように、PelionというIoTプラットフォームの3つのサービスを通して、IoTデバイスをクラウドまでシームレスにつなげた上で、ライフサイクルにわたって管理し、ビジネス変革に資する知見をデータから取り出すところまで、一気通貫で提供しています。

他にも市場には多くの「IoTプラットフォーム」が提供されています。その中には、比較的安価でハードルが低く、簡単に使い始められるものもあります。そうしたIoTプラットフォームは半面、商用レベルの規模と品質でIoTアプリケーションを導入・運用しようとすると、たくさんのエンジニアリング作業が必要になるのが実情です。

逆に、高価だが豊富な機能を備えた高品質のIoTプラットフォームも市場に存在します。ただ、それらは特定の業務プロセスや特定のユースケースに特化しており、自社の業務プロセスに適用しにくかったり、必要以上の機能が入っていたりという側面があります。

それらに対しアームのPelionは、柔軟なビルディングブロックとして提供しているため、各サービスの中で必要な機能をユーザー側で取捨選択して自由度高く組み合わせて使える利点があります。

Pelionは3つのサービスを柔軟に組み合わせて提供し、多様なユースケースに対応する

「餅は餅屋」の戦略でトータルソリューションを用意

ただ、いずれのIoTプラットフォームを選んだとしても、それだけでIoTアプリケーションをすぐ稼動させられるわけではありません。

たとえば、センサーデバイスを開発したり、調達したりする。それをフィールドに配備する。業務システムにインテグレーションする。得られたデータをどう分析するか。これらの要素を一つひとつ積み上げていく必要があります。

しかし、ロジスティクス市場の企業がこれらを自社で手がけるのは現実的ではありません。

そこでアームは、「さまざまな専門領域のパートナー企業とエコシステムを構築し、彼らとともに“トータルソリューション”を用意しています。各パートナーが『餅は餅屋』とそれぞれの強みを持ち寄ることで、エンドユーザーとなるロジスティクス市場の企業がIoTをテコにビジネス変革を実現できるようなプラットフォームを、一緒に作って提供していきます」(春田)。

前編はこちらからご覧ください。

お問い合わせ

Arm Pelion IoT Platformについてさらに詳しくは、アーム株式会社 IoTサービスグループまで、こちらのWebフォーム かメール( iotasia@arm.com )にて、日本語でお問い合わせください。

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